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0216

20代の終わりの頃の話です。
長野市の百貨店の外壁に大きな広告用のパネルがありまして、
そのパネルの利用企画として、一般からポエムを募り、
その月の最優秀賞をそのパネルに掲載する、というのがありました。
昨年末でしたか知人のI先生が、そんな大昔のポエム集をひょんなところで見て、
そこにあった名前と住所と年齢から、私に間違いないと電話を下さったのですが、
そんなことをどうしても確かめたいと思うほどに、意外だったということだと思います。。。

当時私はその百貨店の内装工事を請け負う会社にいたのですが、
会社の上司たちからは何もコメントされませんでした。
ただ遠くから見ているという感じがしました。
日頃の私とのギャップにとまどってしまったのかも知れませんが、
それは何となく予想してました。
書かずにはいられなかった、自分で自分を持て余していました、当時。
閉塞感というのでしょうか、苦しかったのです。
もともとリルケ・朔太郎・ゲーテが好きで、
『月刊ポエム』(あっという間に廃刊になりました)を購読していました。
詩作が趣味ではなかったので、
賞をいただけたらもうそれで満足で以来なにひとつ書いてません。
ほんとに何だったのでしょうか…。
25年も前のことで恥ずかしいですが、
ちょうど題名も「2月」なので思いきって載せちゃいます。
ってか、これを探し出すのが大変でした~~。


『二月』

厳粛に冷たい空気の中を音が渡り
あでやかに清らかな時は来た
それは確か

けれどどこに散ってゆくのだろう
時は物質ででもあるかのように
分子運動を繰り返しながら
そのものを緩めてしまう

涙は思考の力で途中に留まり
“止まった時”という箱のようなものの中で
ただ静かに蒸発している
時が固まってしまったというのに
止みもせず 失われようと動いている
はたしてその先は無であるか

時を止め
息を止めて
水面をのぞくナルシスのように
止まりながら失くなってゆく神話のようなもの
戸毎に言問い 個と問い返す
へんな二月
空気の箱 季節のエアーポケット


で、掲載の絵はこの「二月」に全く関係ない、去年描き上げた某邸です。
ずっと引きずっていて、構図を微妙に変えたり、色を変えたり、描き直しをして、
ようやく最近仕上がり、納品させていただいたものです。
奥様がどこにいても
この絵であの家をしっかり思い出していただけると、私は思っています。


<アルシュ F12>