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090920
もう3ヶ月以上も前になります。
6月7日午後、シロは16歳でお空に旅立ってしまいました。
5月の連休前から耳が聴こえづらくなり眼もどのくらい見えているのか、
一気に老犬になってしまいました。
でも歳を取るのは自然の摂理、ゆっくりのんびりやればいいじゃないのと
散歩も時間をかけゆっくり歩き、ドックフードもシニア犬用のなるべく良さそうなものに替えました。
亡くなる10日ほど前に歯茎から出血してかかりつけの動物病院で診て貰ったのですが、
その時はその対応に抗生物質を出してもらっただけで、
獣医さんには「心臓に雑音があるので弱っているのは確かだけど‥、まだ大丈夫でしょう。
しっかり運動もさせて下さい。」と言われました。
しかし日に日に衰えて肩で息をしているのを見るにつけ、大学生になり家を離れている娘には
「この夏は越せないかもしれないから覚悟だけはしておきなさい。」と電話で伝えました。
しかし当の自分はその場信じられずうろたえ眼が腫れるほど泣きました。

シロは臆病だけれどたくましい野性を持った犬でした。
小さい体を張ってこの玄関ポーチで我が家の見張り番をしてました。
もちろん頼んだわけではありません。犬小屋はちゃんとあるのにいつもこのポーチに居ました。
そして蝶々を見たり、大抵はまるで薄くきったハムを二つ折りにしたような格好で、
どでーんと何の警戒感もなくグーグー寝てました。
小さい時厳しい環境で育ったからでしょう警戒心の非常に強い犬でしたから、
その無防備なサマを見ると娘も私もささやかな幸せを感じたものです。
家の警備と家人の見送り出迎えが自分の仕事と思っているようで、
私の車の音ははっきり聞き分けていましたし、
出迎えでは喜びが高じて体当たりされ何度“膝カックン”をやられたことでしょう。
自由に動けるようにリードははずしていましたが、散歩も家の敷地から一歩も出ようとしなくなり、
薬を隠した一口のドックフードしか食べず、
10日分の薬を飲み終えた日は最後を悟ったかのように水すら口にしませんでした。
それでも、その亡くなる前日私が車で出て帰りが思いがけずあたりが暗くなる時間になってしまい
「シロどうしてるかしら?」と心配しながら帰って来ると、
家の敷地の際で往来に顔をのばし私が帰ってくる方向を心配そうに見ている姿がありました。
いつからそこにいたのでしょうか。
ほとんど食べてないのにポーチから降りてトコトコ往来の際まで出てきて
ヨロヨロの足でふんばって立って待っていたのかと思うと
「アンタが私を心配してドォスンノォ~」でした。
16歳といえば犬では高齢になるのでしょうし、
娘の2度の受験の折も何の心配もかけず良い子で留守番をしてくれ、
娘は念願の獣医学課に合格できました。
出た人が家に帰るのを見届けるのが自分の仕事と思っていたシロは
5月の休みに大学生になった娘に会い、ほっとして役を降りたのだと思います。
私は小さな足音が聞こえなくなりひどい喪失感でしたが、
ある日ふいにぽっかり空いた胸のある場所にすとんとシロが入った気がしました。
”あぁシーちゃん、そこに来たんだね”って、はっきり思ったのです。
少し前の元気だった頃の写真を見ながらゆっくり描きました。
<アルシュ A3 細目>