Y字の路地
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長野駅東口をインター線須坂方向に行った七瀬町の路地です。
駅西側の市街地に出たい時など自転車でよく通るお気に入りの路地ですが、
最近駅東口開発が加速度増してきて
あれよあれよと言う間にどんどん風景が変わっています。
路地の特有のくぐもった匂いと湿気を帯びたひんやりした空気が好きでした。
善光寺の裏手にあった高校に通う道がそうでしたし、
東京の大学生だった頃はお茶のけいこに中野区の先生のお宅に週一度通いましたが、
都会であっても中野通りを一歩入ると木の塀に挟まれた狭い路地でした。
その後長野市に帰って入った会社も長野で一番大きなデパートのすぐ近くでしたが、
路地の長屋を改装して事務所にしていました。
当時の社長は長屋隣のおばあさんに頼まれて
棚板を直したりしてあげていたのを思い出します。
車道を通っていてもピンとこなくてもこうして路地に入るといやおうなしに
五感に現実がつきささるようです。
このY字の先も好みの路地がしばらく続いていたのですが、
今は更地になり整備され建物が建ちつつあります。
「くぐもった匂いのひんやりした空気」の路地に乾いたほこりっぽい空気が入ってしまいました。
興ざめです。
ですが、描いてみたいとずっと思っていたのです。
昨年世田谷美術館での横尾忠則さんの展覧会『冒険王』で、
横尾さんの『Y字路シリーズ』の迫力に感動したのですが、
ここを通るたび「あ、ここもY字路だわ!」なんてひそかに思っていたのです。
この風景自体もいつまで残るかわかりませんが、
ちいさいスケッチながら描けて良かったと自分の中でほっとしています。
<MUSE KENAFPAPER SM(22.8×15.8cm)>